けやの森学園幼稚舎・保育園
 22年度の学び


水のめぐりプロジェクト学習
けやの森学園では、「生きる力を育む自然の教育」の旗印の下に35年間、自然体験活動を中心とした教育を実践してきました。身体で学ぶ体験学習は物事の本質を理解することができます。体験の場を自然の中に見出したのは、その多様性、関係性等のもつ意味のすばらしさ、奥深さでした。  昨年、水のめぐりをテーマとした自然の体験学習を行ったところ、活動の連続的、継続的、総合的な展開が子どもたちの興味関心を強め、その後の生活に著しい変化がみられました。そこで昨年の活動をふり返り検証することによって、これが、子どもの心にどう影響を及ぼし、何を培っていくのか考え、見届けたいと思いました。

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 体験 ・ ふしぎの心 ・ 交歓
事例1    大きなおいもができたらいいな!
<さつま芋の植え付け> 5月上旬
 昨年、経験した子どもたちから植え方の説明を聞き、ペアで各々植え付けをした。子どもたちの苗の植え方が浅かったため、畑のお手伝いをしてくださる保護者や近隣の方から枯れてしまうと心配の声が上がった。大人が手を加えることも提案された。しかし、子どもたちとって、「どうしてこうなってしまったのか」を考える良い機会になると思い、保護者へ説明し、理解を図った。しばらくして、畑に行くと、残念なことに苗は根が付かず、ほとんど枯れてしまった。

疑問1 どうして枯れてしまったんだろう?
さつま芋の苗はどうして枯れてしまったのか、うみ組の子どもたちで話し合いをした。
子ども 「栄養が足りなかったんじゃない?」
     「水をあげないとダメなんだよ」
     「本物の水が足りなかったんだ」
     「水分をとるんだよね」
     「水分って何?」
     「水とかお茶とかジュースとかも?」

 枯れるとはどういうことなのか、どうして枯れてしまったのか、さつま芋にとっての栄養とは何なのかを話し合ううちに、子どものなかから"水""水分""本物の水"という言葉がでてきた。
 話し合いを進めるうちに「どうして水はできるんだろう?」と水についての疑問がわいてきた。

<子どもの気づき・学び>
・さつま芋の苗が枯れてしまったのは水が足りなかったからという考えに行きついた

・うみ組の中の数名は植物が生きていくために、太陽と水と土の中の何かが必要であるとぼんやり気づいていた

・同じ水でも「本物の水」「水分」など、子どもたちが知っていることばで表現していた

≪考察≫
・子どもたちは自分たちの今までの知識を生かし、植物には水や養分が必要だと気づいていった。そこから、水についての疑問や興味を持ち始めた

・「本物の水」=「水道水」という子どもの認識と大人の捉え方が違うところに学びのおもしろさがあると感じた


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事例2    水と仲良しになったよ!
<川あそび> 5月下旬
 けやの森学園の近くを流れる入間川の上流で川あそびを行った。川の流れの中をロープに捕まって川を渡ったり、チューブに乗って川の流れを楽しんだり、高い岩の上から飛び込んだりと自然の中でたくさん水と触れ合った。

<保育者の想い>
1.まずは遊びを通して水と親しんでほしい
2.本物の水=水道水が、川の水と関係があるのかを考えるきっかけにしたいと思った

疑問2 本物の水=水道水 はどこからきているんだろう?
子どもたちは"本物の水"は"水道から出てくる飲める水"と思っていた。その水はどこから流れてくるのか投げかけたが、なかなか意見がでてこなかった為、保育者から新たな疑問をぶつけた。

保育者 「川の水と水道から出てくる水は同じもの?違うもの?」
子ども 「たぶん、同じ・・・」
保育者 「じゃあ、川の水はこのまま飲める?」
子ども 「飲めない!」
     「だって砂とか石とかあって汚いから・・・」
     「どうやってお家の水道から出てくるんだろう?」
     「どこを通ってくるのかな?」
     「どこかで きれいにしているはずなんだけどなあ」

保育者 「川の水が水道水になるってことは、川の水がなくなったらどうなるの?どうして雨が降らない日が続いても川は流れ続けているの?」
子ども 「・・・」

<子どもの気づき・学び>
・川は水が冷たくて深かった
・川はお風呂と違って流れがあった
・身体がヒューって流されちゃうかと思った
・川の水も水道水も同じ水だが、川の水が飲める水に変わるためには、どこかで何かをしているんではないかと、子どもは気づき始めた

≪考察≫
・蛇口をひねると出てくる水は安心して飲むことが出来る水という認識は子どもたちに共通していた

・川で水に親しみ、楽しんだことによって水が身近なものに感じられた

・川の水を「どこかできれいにしているはず」という言葉が次に活動を考えるきっかけになった


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事例3    本物の水って、こうやってできるんだね
<有間ダムと浄水場の見学> 6月
 子どもたちの考える本物の水がどこで、どのように作られているのか、川の水と水道水の関係を知るためにダムと浄水場への見学を計画した。
子どもが水道水は人の手が加えられて出来ていることに気付き、本物の水=水道水ができる仕組みを知ることで、私たち人間と水の関係を学んでいった。

<保育者の想い>
1.本物の水=水道水は、川の水をどこかでどうにかしてできているのではないか?という疑問を解明させたいと思った
2.子どもの疑問を解明することで、さらに活動に興味をもち、主体的に楽しんでほしいと思った
3.わからないことがわかったときの喜びを味わってほしい

疑問3 どうして雨が降らなくても、川は流れているの?
入間川上流にある有間ダムへと向かった。山に囲まれた大きなダムに水がたくさん入っている様子を見た。

子ども 「大き〜い」 「何?これ?」
保育者 「大雨が降ったら、山から流れてくる雨水をこのダムにためて、少しずつ川に流しているんだって!だから入間川はあふれないんだね」

ダムの音声ガイドで、このダムが洪水を防いで家を守り、みんなの水道水を確保するために作られていることを知った。

保育者 「このダムが水道水になるということは、ここの水は飲めるの?」
子ども 「このままじゃ無理でしょ〜」 「魚とか泳いでるし、ゴミとか葉っぱとかあるし・・・」 「どこかできれいにしてるんだよ!」

疑問4 どこできれいにしているの?
 次にその"きれいにしている"場所である浄水場の見学をして、水道水ができる仕組みを学んだ。川の水に薬をまぜたり、ゴミを取り除いたり、砂で濾過したり、消毒したりして、水道水が作られていること、そして水道管を通って、各家庭に運ばれていることを知った。

<子どもの気づき・学び>
保育者 「浄水場に行って、どんなことがわかった?」

子ども 「雨から本物の水=水道水ができるって分かった」
     「ダムと浄水場とお家がつながってるって分かった」
     「1回、お水をダムや浄水場にためるって分かった」
     「最初は砂でドロドロになるから飲めないって思ってたけど、
      砂できれいにしてるって分かった」
     「水には、ばい菌があるから消毒するってわかった」


≪考察≫
・子どもたちの疑問を受けて計画した浄水場の見学は子どもたちにとって具体的・直接的な理解へとつながった

・自分たちが抱いた疑問を解明するということで何をしに浄水場へ行くのか、目的を自覚していたため、スムーズに理解できたと思う

・浄水場の見学によって、本物の水=水道水には、「人間の手が加えられている」ということがわかり、これを次の活動のきっかけにしたいと思った


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事例4    山の水って、あまいんだね
<富士山5合目ハイク> 7月
 水道水が作られる仕組みを知った子どもたちに、人間の手を加えずに、飲める水があることを伝えた。

<保育者の想い>
本物の水=水道水なのかを問い直してみたいと思った

保育者 「この前浄水場へ行って、川の水は消毒しなければいけないってことがわかったよね。でもね、人間の手を加えなくても、そのまま飲める水があるんだよ!」
子ども 「どうして?」 「その水どこにあるの?」 「飲んでみたい!」

 そのまま飲める水を求めて富士山5合目のハイキングを行った。
実際に富士山で木の根や土の間からポタポタと落ちている水を発見し、富士山のふもとで山から湧き出た水を飲んだ。

<子どもの気づき・学び>
「冷たい!」「おいしい!」「あまーい!」

≪考察≫
・本物の水=水道水と味が違う。おいしいと感じていた

・富士山麓の湧水として飲んだ水は、実は、麓の道の駅の蛇口から出ている水だった。できたら、自然の中での清水を味あわせてあげたかったと悔やまれる

・湧水を飲んだだけでは、本物の水=水道水という子どもの認識は変わらなかった

疑問5 どうして富士山から水が出てくるの? なぜその水はそのまま飲めるの?
 話し合いを始めると、浄水場で得た川の水を浄化する知識を基にたくさんの意見が出てきた。

<子どもの気づき・学び>
「山に薬が入っているんじゃない?」
「最初からばい菌ついてないんだよ」
「雪が溶けて富士山のすき間を通ってくるんじゃない?」
「土の中を通ってて、土の中がトンネルになってるんじゃない?」
「富士山の石は穴があいていたよ!」
「富士山で消毒しているんじゃない?」
「そうだ!山の中で!」


≪考察≫
・水道水と山の水の味の違いに気付いた

・水道水を作る仕組みが富士山の中にもあるのかな?と気づき始めたので、本当にそうなのか目で確かめられる実験をしたいと思った


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事例5    透明な水が落ちてきた!
<川あそび> 5月下旬
 浄水場で得た知識をヒントに山の土が水をきれいにしているではないか、という予想をした。そして、それが本当なのか確かめるため、土壌による水の浄化実験を行った。

<保育者の想い>
1.自然の浄化の仕組みを知ることによって、木や土の役割に気づいてほしいと思った
2.山の働きを実際に目で確かめさせたかった
3.人間の手が加わらなくても飲める水ができることを証明したかった

疑問6 本当に山の土でお水はきれいになるの?
 ティッシュのみと、土とティッシュを入れた2種類のペットボトルを用意し、同じ量の色水を流し込んで、比較実験を行った。
 色水を流し、水が流れ出てくる様子を見て、土に浄化する力と保水する力があることを実際に見てとることが出来た。

<子どもの気づき・学び>
「ティッシュのほうがポツポツたれてくるのが速いよ」
「ティッシュに色がついてる」
「土の方がきれいになってる」


この実験結果をもとにさらに話し合った。

<子どもの気づき・学び>
子ども 「雨が降ったら、お山を通って出て、川に流れてくって分かった」
      「土とか砂とかできれいにしてるって分かった」

保育者 「山がなくなったら?」
子ども 「台風とかきた時に全部流れてきちゃう」
      「家とか道とか壊れるよ」
      「どろ水につつまれたら生きていけない」
      「だからお山って大切!」
      「木も大切!」


≪考察≫
・雨が富士山にしみ込み、土でごみをとっていることがわかった
・自然の世界では、山が浄水場の代わりになっていると気づいた
・本物の水は自然の水であると認識が変わった
・疑問を確かめるふしぎを解き明かす方法として「実験」というものがあることを知った

ここまでの活動を通して保育者が気づいたこと
・実験の結果をもとに山の役割、そして、水と山と人間の生活とのつながりを理解することができた

・自分たちの命が自然と深く関わっていることを知り、自然を身近に感じるとともに、その大切さに気づくことができた

・それまでの活動で得た知識を基に、予想を立てたり、新たな考えを導いたりすることができた。学びを積み重ねているという実感が出てきた

・五合目ハイクに行き、木の根からポタポタ落ちる水と、実験の際にペットボトルに落ちる水を見て、自然界の仕組みを理解した。子どもの理解はそれまでの、その日その時の活動に対する断片的なものから、一連の知識がつながる総合的なものへと変化してきた。自然の現象と頭の中で考えていたことが一致した。

・自分の目を通して比べあわせたり、違いを察知したり、変化を追い求めたり、確かな学びにつなげることができた


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事例6    おかわりーっ!おいしいねっ!
<みそ汁作り>7月
 6月に畑で収穫したじゃが芋と、富士山から持ち帰った湧き水でみそ汁を作ることになった。
自分たちで育てた材料を使って、自分たちの手で調理してできたみそ汁の味は格別だった。


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事例7    ついに海まで来ちゃった!
<磯あそび> 7月
 雨が降って、山の中を通って川になることが分かった子どもたちは、次に川が本当に海に流れ込むのかを確かめるため、海まで足を運んだ。
実際に川が海へと様子が変わっていくことを目で確認することができた。

子ども 「本当につながってた〜!」
     「もう海のにおい!」
     「波が出てきてるよ」
     「海がゴールなんだー」


<保育者の想い>
1.水の循環を理解してほしいと思った
2.山と水と人間とのつながりに気付いていたため、次は水と生き物とのつながりを考えさせたいと思った
3.磯あそびを通して、生き物と楽しく触れ合い、さらに水への興味と活動への意欲を抱かせたいと思った
4.楽しい思い出を作ってほしいと思っていた。そして、楽しい時間を共有することで子どもたち同士の仲を深めてほしいと思っていた(夏休みに富士登山が控えていたため)

ヤドカリ、カニ、ウミウシ、ヒトデ、カイ、フナムシ、ウニと磯でたくさんの生きものと出会った。ウミウシのフニャフニャとした感触を楽しみ、紫色の汁が出てくる様子に驚いたり、岩の中にひそむカニをつかもうとしたり、みんな磯あそびに夢中になった。

疑問7 海にたどりついた水はどうなるの?
保育者 「川から海に毎日毎日水が流れ込んでいるということは、海は毎日、大きくなっているの?」
子ども 「なってなーい!!」
保育者 「海にたどり着いた水はどうなるの?」
     「本当に海がゴールなのかな?」

子ども 「海の下に土があってしみ込んでいくんじゃない?」
     「砂場でお水いれてもなくなっちゃうよ」
     「海って砂だしね」 「外国に行くんじゃない?」

保育者 「川は雨が降って始まることが分かったけど、雨はどこから降ってくるの?」
子ども 「雲じゃない?」「黒い雲だよ」
保育者 「じゃあ、その雲はどうやってできるのかな?」
子ども 「空気!」「お水!」「太陽!」「けむり」「風?」
保育者 「いっぱい出てきたね」
子ども 「雲に何かいるんじゃない?」
     「空気と水で、人間に見えない何かになるんじゃない?」
     「それで、空にあがっていくんじゃない?」

保育者 「どうして上にあがっていくんだろう?」
子ども 「・・・考えとく!」
保育者 「では、おなべに水を入れて火にかけます。そうすると?」
子ども 「あわが出てくる」 「あっちっちになる」
保育者 「そして蓋をしめておきました。暫くして蓋を開けると?」
子ども 「そしたら何かたれてきちゃう」 「ポタッポタッて落ちてきちゃう」
保育者 「それは空でいうと・・・?」
子ども 「あめ!」
保育者 「じゃあ水がお湯になると、ちっちゃいつぶができるんだね。
     それから、みそ汁作るとき何か白いもの出てこなかった?」

子ども 「けむり!」 「ゆげ!」
    「何でお水は熱くなると、湯気が出てくるのかな?」

保育者 「海の水も何かで温められると上にゆげになって出て行くのかな?」
子ども 「それで雲になる!」 「それで雨がふる!」
保育者 「すごいすごい!わかってきたよ。じゃあ何で温められるのかな?」
子ども 「火!」「焚き火とかするよ」「太陽!」
     「海の水いっぱいあるから太陽でも下の方はあったまんないんじゃない?」

保育者 「そうだね。上のほうの水が空にあがっていくんだろうね!」

ゴールに近づいているような、大きな答えが見つかるような高揚感があり、活発な話し合いが展開された。その後、保育者から子どもたちの予想が当たっていることを伝え、地球上の水の量は変わることなくめぐっていることを知らせた。

<子どもの気づき・学び>
・「ゆげが空に上がってだんだん雲になる。雲から雨が降って、山におりて、川になって、海に着いて、上にあがって、雲になって、雨が降って・・・」と繰り返されていることにい気づいた。それを子どもは、「水はぐるぐるまわってる!」と表現した

・「お水はずーっとぐるぐるまわってるから、お水の量は少なくなったりしない」等々、子どもは理解したことを各自の言葉に置き換えて表現した

≪考察≫
・海にたどり着いた水は太陽の光に温められ、小さな湯気(水蒸気)となって、空へのぼると推測。みそ汁作りでの体験が考えをめぐらせるヒントになった

・子どもが水の循環を理解することは難しいと思っていたが、言葉や現象を子どもなりに捉え、頭に残して考えを深めていったことに驚いた。そして、自由に発せられる子どもの表現は豊かだった

・日頃の生活の中で何気なく目にしているものが保育者の問いかけにより、よみがえり、体験として言葉にして発しながら自身の頭の中で整理されていく様子がわかった

・水から空への広がりが自然な形で、子どもたちの中に描かれていった。水蒸気が雲になり、雨になる。一つ一つの事象が結びつき、つながっていった

・水と生きもののつながりはこれからの活動への課題とした


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事例8 てっぺんまで登るぞ!でも、ママと離れるのはつらいな…
<富士登山> 8月
  年長児にとって最大の冒険である2泊3日の「富士登山」。5合目から自分の足で登り始めた。つらく長い上り坂や、家族と離れて生活することに涙しながらも互いに励まし合い、3400メートルまで登ることができた。
はるか上に見えていた雲がいつの間にか眼下に広がり、風に押し上げられ、下から湧き上がってくる雲の中も歩いた。
海や川や湖などの水が温められて、水蒸気になって空へ上がり、風や冷たい空気に冷やされて雲になること、そして、雲が集まってやがて雨が降ってくることを改めて知った。

<保育者の想い>
1.普段味わうことのない過酷な状況の中で、精一杯の力を出し、様々な想いを抱いてほしい
2.成長する上での課題を自覚し、自らを変える、新しい世界に一歩踏み出すきっかけにしてほしい
3.自分(人間)の力では抗うことのできない自然の厳しさを体で感じ、これから先困難にぶつかった時のヒントにしてほしい

疑問2 どうして富士山に登るの?
子ども 「自分に力をつけるため」
     「自分の事は自分でできるようにする」
     「友だちと助け合って生活するため」
     「頑張る」
     「最後まで諦めないで歩きたい」


<子どもの気づき・学び>
・いろいろな形の雲があった。速かった
・湖が小さく見えた。景色がとてもきれいだった
・みんなと一緒に歩いて食べて寝たのが楽しかった
・岩のぼりがつらかった
・息をたくさん吸いたいけど吸えなかった
・がんばれば登れる
・大変だったけど上に着いた時嬉しかった
・今度は頂上に行きたい
・苦しかったけど、ボク、日本一の山に登ったよ

≪考察≫
・親(保護者)の判断が及ばない環境で、子どもが自ら何かを決断する事が自立につながる

・過酷な環境の中での体験は鮮明、強烈に子どもの記憶に残る

・富士登山が子どもにとって正(成功)の体験になろうと負の体験になろうと、どこでどうその子の学びとするかという保育者の導きが重要となると学んだ

・敢えて行っている負の体験によって一人ひとりの子どもの姿勢がはっきりしてきた

・キャンプ前後、不安や希望、現実、自分自身と向き合い、様々に心が揺れ動く、それが豊かな情操を培うと思った

・富士登山を通して苦しみ、かなしみ、喜び、諦めること、諦めないこと、人を信頼する事とは何かを身体と心で理解することができた

・その時の自然の状況や己の身体の状態によっては、思い通りにいかないこともある。それを考えることは自分自身と向き合う時間になる。そして、望んで叶うこともある。反対に努力しても叶わないことがあるということを知る。それでも、苦しみの中で楽しみ、喜び、希望を見つけることが、生きる力になると感じた

・不安をかかえながらも、素直に声をかけあい励まし合う姿が見られた。過酷な自然の中で同じ気持ちを共有し、やさしい気持ちを持つことができた

<R男の体験>
―ひとりだちキャンプ前―
 R男はとても活発。心の声がそのまま口に出てしまう素直な性格。クラスでは良く発言する中心的な存在だった。しかし、その一方で小さなことに悩み、迷う、臆病な面があった。自分に自信を持ち、新しいことに挑戦する勇気を持つことが課題だった。

―ひとりだちキャンプ中―
 目標の3400mで登山を続けるか否かを問われた場面で、R男は下山を決断。普段仲の良い男の子たちがさらに上を目指すなか、自分は体力の限界を感じて下山したことにショックを受けた様子だった。

―ひとりだちキャンプ後―
それまで活発にしていた発言も目立たなくなり、時折「オレなんか」とつぶやくこともあった。1学期までの勢いを失ってしまった。担任は秋のプレイデイ(運動会)での選手宣誓やリレーのアンカー等皆の代表となるような役目を与え、復活の機会を伺うが、決定的な効果は得られなかった。

―スノーキャンプ(詳細は後述)―
しかし、3学期直前のスノーキャンプでR男の心の内が明らかとなった。

2泊3日のスノーキャンプは最終日のスキーはリフトに乗りゲレンデの上から滑り降りるプログラム。前日の夜より最終日はスキーか雪あそびを自ら選択するよう伝えられていた。一度はスキーを選んだR男だったが、すぐに迷い始め、やはり雪あそびをしたいと担任に告げた。R男はスキー自体は楽しいが、リフトに乗ることを怖がっていた。不安なことに挑戦し、その先に待つ楽しさを感じて、自信をつけてほしいと思い、担任は「一緒にスキーに行けなくて残念だな〜。R男君スキー上手なのにもったいないよ」と投げかけた。すると、「まだ考えてもいい?」と再び悩み、最終的にスキーを選択した。ゲレンデへ向かうバスの中でR男は自ら担任に「どうしてスキーにしたか分かる?」と話しかけた。分からないという担任に「あのね、オレ富士山の時、途中で諦めちゃったから、だからスノーキャンプは最後までスキーにしようって思ったんだ」「あー、でもオレダメだな。あの時諦めちゃったんだよ…」そう告げたR男に担任は「今、そのことに気がついただけですごいことだよ!そんなこと考え続けていたなんて知らなかった。とっても嬉しいよ」と伝え、一緒にスキーを楽しんで帰ってきた。
 スノーキャンプ報告会でクラスの子どもと保護者の前で、富士登山での負の体験を学びに、挑戦して帰ってきたR男の言動を報告し、皆から拍手をもらった。


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 表現
事例9    伝えよう!水の大冒険だー!!
<秋のプレイデイ> 10月
 子どもたちとこれまでの体験(畑、川、山、海の活動)を振り返り、水のめぐりを"水の大冒険"と称して、短い物語を考えた。そこに身体表現を加え、秋のプレイデイで発表した。

<保育者の想い>
1.同じ体験をしてきた友だちと意見を交換し、力を合わせてものを創り上げることによって想いを共有する。そして、響き合う喜びを感じてほしい
2.感動を周りの人へ伝え、理解してもらえる喜びを味わって自己の内面を表現してほしい

<子どもの気づき・学び>
「雨つぶのダンスが楽しかった」
「お客さんがいっぱいでドキドキしたけど、やっぱり楽しかった。」
「みんなでがんばったのが、うれしかった。」
「拍手をもらって、うれしかった」
「水がぐるぐるまわっていること、わかってもらえたかな?」

≪考察≫
・実際に体験していたため、スムーズに物語や身体表現が考えられた

・人前での表現や自己の表現が苦手な子には、時に励まし、時に課題を与えながらすすめた

・保育者が介入しなくても、子ども同士で話し合い、相談を重ねていた


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事例10    見てみて!これ私が作ったの!
<生活作品展> 12月
 うみ組は半立体自画像や、磯あそびを描いた絵をもとにした絨毯、また一人ひとりの作品では、男児は木工、女児は裁縫に挑戦し、自分の思い描いた作品を計画して作り上げた。

<保育者の想い>
1.自分の想いを自ら形にする喜びを味わい、自ら目標を設定し、自分の頭で考える力を養ってほしい
2.目標の達成に向かって努力や工夫する力を身につけて、やり遂げた時の達成感と満足感を味わい、自信をつけてほしい

<子どもの気づき・学び>
何回も失敗したけど、できた時はすごーく嬉しかった
・みんなに誉められて、嬉しかった
・もっとやりたかった

≪考察≫
・感動したことは伝えたくなり、その気持ちを自由に表現する場が必要

・様々な自己の表現方法があることを知ることが大切だと思った(自分の得意な方法が見つかるとなお良い)

・違った角度から体験を記憶に残すことができた

・自ら目標を設定し、自分の力でやり遂げるという状況は、子どもたちに集中力、こだわりを生み、より意欲的になることがわかった


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 体験 ・ ふしぎの心 ・ 交歓
事例11    うわぁ〜!真っ白の世界!
<スノーキャンプ> 1月
 初めてスキーを経験したり、雪で思いっきり遊んだり全身で雪を感じた3日間。雪や氷がどのようにできるのかを話し合い、これまで追究してきた水の新たなふしぎを見つけた。

<保育者の想い>
1.白銀の世界を体験することで、水は気温によって姿を変えることを知り、水への興味を更に広げたい
2.新しいことに挑戦し、困難を乗り越えた先の楽しさを感じてほしい

専門家より水が温められて、水蒸気となり、雲となってその水滴が上空で冷やされると六角形の雪の基ができる。その無数の基が地上に降りる間につながり、雪(結晶)になることを学んだ。雪の結晶の写真を見ながら、結晶が成長する様子も知ることができた。

疑問9 「雪は何色?」
専門家 「雪は何色?」
子ども 「白」
専門家 「じゃあ、雪を集めてコップに溶かしたら何色になる?」
子ども 「透明!」
専門家 「そう!実は雪は無色透明なの」
保育者 「じゃあ、どうして白く見えるの?」
子ども 「元々透明だから、人間の目には見えない」
子ども 「赤ちゃん(雪の結晶)が、合体して、積もると白くなる」
子ども  「赤ちゃんが活動を始めて、大人たちがどんどん降ってくるじゃない?で、固まって赤ちゃんがどこに行ったか分からなくなった頃に白くなる?」
保育者 「じゃあ、降ってきたときに何か起きているのかな?」
子ども 「わかった!固まったり、つぶされたり、形が崩れると白くなる?」

その後、専門家より、面と光の関係(太陽の反射)について説明を受けた。

<子どもの気づき・学び>
・雪あそびが楽しかった
・スキーの板がスイスイすべった
・雪はじっと見るときれいだった
・雪の赤ちゃんが生まれて、そこに違う赤ちゃんがくっついて固まるんだね
・みんなが手をつないで雪は段々大きくなるんだね

≪考察≫
・専門家から話しを聞き、ふしぎに思ったことを質問することができた

・先生から難しい言葉が出てきても「手をつなぐ?」と子どもたちなりの解釈をして、結晶の理解を深めていた

・自分たちが今まで学んできたことから、雲から雨だけでなく、気温によっては雪が降ってくることがわかった

・水は自然現象によって姿・形を変えるという学びに広がった


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 表現
事例12    こんなに成長したよ!
<ひなまつり会> 2月
 1年間の総まとめとして、水のめぐりについて発表を行った。
 時間軸を追いながら、川あそび、ダムと浄水場の見学、富士登山、磯あそび、スノーキャンプ、まとめ、と場面を区切り、振り返りに時間をさいた。子どもたちの発言から、それはつまりこういうことか!という学習に落とし込む作業を丁寧に行った。
 子どもの生の言葉を台詞に用い、発した子どもにその台詞を与えた。また、実際の活動の流れと同じように台本をまとめ、疑問に対して、子どもが解答を述べていくという発表スタイルをとった。実際の写真をOHPでバックに映し出すことによってわかりやすく伝える工夫をした。3月にはこの発表を市の教育委員会主催の環境講座で披露することになった。

<保育者の想い>
1.1年間の活動を振り返り、学びを自分たちのものにしてほしい
2.第三者に自分の言葉で発表し、学びを伝えることで自信をもってほしい

ひなまつり会へ向けての子どもの考え
・水はぐるぐるまわってるってことを伝える ・「こんなに成長したよ!」ってわかってもらう

<子どもの気づき・学び>
子ども 「緊張したけれど、成功してうれしかった」
保育者 「何かを成功させるためにはどんなことが必要なんだろう?」
子ども 「いっぱい練習したよね」「みんなの気持ちを合わせる!」
保育者 「それから?」
子ども 『勇気!』 『希望!!』 『集中!!!』
     「明日もひなまつり会、やりたい」


≪考察≫
・ふしぎを追求する楽しさを味わった

・自分の身体で確かめる体験が意欲と自信となり、学習につながった

・「水」を通して自然と生き物と人間の関わりや自然界とのバランス等々、「水」についてだけでなく、周りの事柄にも気づくことができた

・ 体験から言語的、造形的、科学的、道徳的な分野に学びを深め、総合的な学習となった


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まとめ
・連続した体験によって振り返りをしながら、次の体験の意義をはっきりさせ関連性ができた。そして、学びの道筋が明確となった

・どうして?→ 予想 → 体験・実際 → 振り返り → 新たな疑問 … このサイクルで学習を進めていったことがよかった

・自然の中で得た知識が実験を通して立証され、さらに確かな学びとして子どもの頭に刻まれていった

・一人の発言が次々と活発な交換に発展していった

感じたことを自分の言葉で伝え合う姿や、テンポのいいやりとり等、子どもたちの感覚の素晴らしさが次第に自信となっていった。中には考えることが苦手な子どももいるが、友だちの意見を聞いて自分のものにしていくという学びもみられた

・一つひとつの体験を共有することによって仲間としてのつながりや、クラスとしてのまとまりも生まれた

・疑問や気づき「こうしたらどうなるの?」「これってふしぎ!」「きっとこうなるよ」等、仕組みを理解し、予想したり、比較したり、タイムリーに活動を進めていくことが保育者の大きな役割となった。保育者は思考を深め、探究心を旺盛することも大いに求められた

・保育者の知識では子どもの疑問に満足するまで対応することが時に困難だった。そのため、専門家の参加があってよかった

・子どもは知りたい、触れたい、見たい、聞きたい、やってみたいという強い気持ちを持っており、その欲求を満たす活動を行うことで、活動に対して意欲的・主体的になることがわかった。さらに目的やねらいを自覚するため、体験が生き生きとした知恵や知識になった

・活動を振り返り、自分の言葉でまとめることで、学びが子ども自身のものになった

・活動を始めた頃は、保育者の主導で話し合いが行われていたが、体験が重なり、学びが深まるにつれて、子ども主体の活発な話し合いに変化していた

・「水」を中心に川や山、海、生きもの、そして人間。すべてが関わり合って命が存在していることがわかった

・一年間で事例12まで行うには、日々の生活が忙しすぎて、あわただしく、子どもへの配慮と家庭との連携を密にする必要があった

・家庭がこの年長児の活動の主旨を理解し、一緒になって考え、楽しんでくれたことが、更に子どもの理解を深めた。


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